『東京五輪で日本はどこまで復活するのか』(メディアファクトリー、2013年)より抜粋
■2020年を、希望を持って語りたい
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定した。開催期間は、オリンピックが7月24日(金)から8月9日(日)の17日間、パラリンピックが8月25日(火)から9月6日(日)までの13日間。この真夏の30日間、東京の街は世界各国から数十万人のゲストをお招きして、56年ぶりの平和の祭典でおおいに盛り上がることだろう。
2013年9月7日(現地時間)、地球の裏側のブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)総会で、東京五輪招致委員会が五輪招致に成功したことは、ここ数年でいちばんのグッド・ニュースであった。
だが、都市政策専門家でもある私は、嬉しさと同時に、身の引き締まる思いもした。なぜなら、オリンピック・パラリンピック(以下、両者を合わせて「五輪」と表記する)を開催するということは、開催する都市にとって、インフラストラクチャーを整備する最大のチャンスだからだ。そして、民間企業をも巻き込んで新たな都市空間を形成する絶好の機会でもある。つまり、開催までの7年間(いや、もうすでに6年8ヵ月を切っている)をどう活用するかで、2020年に得られる実りの大きさも決まってしまうのだ。
そこで私は、東京が目指すべき都市の姿を、自分なりに考えてみた。五輪開催を機に、東京はどのような街へと成長すべきなのか。すると、東京の未来像を考えていく課程で、日本全体の近未来の姿もぼんやりと見えてきた。そして、確信した。2020年東京五輪をあらゆる意味で成功させれば、私たちの日本もかつての輝きを取り戻して、力強く復活する、と。1950~60年代の高度成長期の再現までは難しいにしても、80年代後半のバブル期に入る直前くらいまで、日本経済は回復できるのではないか。しかも、私の計算によれば、五輪直後に陥りがちな景気の低迷は今回は訪れず、少なくとも2030年代まで、日本の「よい時代」は続いていく。
未来に向けての計画を立案するとき、もう一つ重要なポイントがある。それは「希望」を持つことだ。未来に明るい希望を思い描かなければ、人も社会も、よくなるわけがない。
私たち人類は、未来に常に希望を抱き続けることで、今日までの発展を成し遂げたのだ。だから私も、東京の未来像について、東京五輪について、五輪開催のために必要な準備について、そして2020年の日本の姿について、希望を持って語りたいと思う。
2020年東京オリンピック・パラリンピックは、私たち多くの国民にとって、期せずして与えられた希望の灯りである。私たちは、この希望の灯りを、もっともっと明るく輝かせる努力をすべきではないか。いまからでも、できることはいろいろあるはずだ。そして、希望の灯りで日本全体を照らしたとき、未来はもっと明るく見えるはずだし、子どもたちも希望を持って生きていけると思うのである。本書は、東京五輪に夢と希望を見い出すための、日本復活のシナリオである。
<目次>
第1章 なぜ東京に決まったのか ?都市政策の視点から?
第2章 経済波及効果は18兆円以上
第3章 東京五輪と大阪万博が日本にもたらしたもの
第4章 東京の都市空間が「更新」される
第5章 新たな産業と雇用の創出
第6章 向上する東京の国際競争力
第7章 日本全国に希望と未来が広がる